双極性障害(躁うつ病)
双極性障害(躁うつ病)について
「躁うつ病」と「うつ病」は呼び名が似ていますが、全く異なる病気です。最近では、「躁うつ病」は「双極性障害」と呼び名を変えていますが、従来の「躁うつ病」という言い方のほうが分かりやすいと思います。女性では5人に1人、男性では10人に1人と言われる「うつ病」よりも発症頻度は低く、100人に1人くらいの割合で男女の差なく発症すると言われています。
「躁うつ病(双極性障害)」とは名のとおり『躁』と『うつ』を繰り返す病気です。『躁』とは病的に気分が上がった状態、テンションが上がった状態を指します。『うつ』とはその逆で、まさに「うつ病」と同じ状態です。問題は「うつ病」の『うつ』と、「躁うつ病(双極性障害)」の『うつ』はその時点では全く見分けがつきません。それまでの『躁』状態が確認されたり、「うつ病」と診断されていた方が『躁』状態となって初めて「躁うつ病(双極性障害)」と診断がつきます。
誰にでも気分の高いときと低いときがあります。しかし「躁うつ病(双極性障害)」では通常誰にでも起こるようなレベルを超えて、自分がコントロールできないくらいの気分の低下と上昇を繰り返してしまいます。はっきりとは解明されてませんが、脳内の気分の上げ下げをコントロールする部分(脳の前のほうです)が障害され、下がりっぱなし、上がりっぱなしとなると言われています。
うつ病相
「うつ病相」とは、「躁うつ病」の『うつ』状態の時期のことを言います。詳しくは「うつ病」を参照してください。しかしうつ病とは治療法が異なりますので注意が必要です。うつ病が治らないという方々の中には「躁うつ病(双極性障害)」が隠れています。
躁病相
それでは、うつ病と決定的な違いである「躁病相」について説明します。決定的に違う病気なのに、本人や周りまでもが躁病相だと気づいていないことが多いのが問題となります。激しい躁病相では誰が見ても違和感を感じるほどのハイテンションとなりますので(入院となることが多いです)少なくとも周りは躁病相に気づくことができます。しかし軽躁状態では、周りからも「変わった人」「元気な人」としか見られず、本人も「調子が良い」「気分爽快」「何でもできるような気がする」といって自分自身が病気であることを認めることができません。
躁病の特徴を以下に示します。
1.気分が良すぎたり、ハイになったり、興奮したり、調子が上がりすぎたり、怒りっぽくなったりして、他人から普段のあなたとは違うと思われてしまう
2. 自分が偉くなったように感じる
3. いつもよりおしゃべりになる
4. 色々な考えが次々と頭に浮かぶ
5. 注意がそれやすい
6.活動性が高まり、ひどくなると全くじっとしていられなくなる
7.後で困ったことになるのが明らかなのに、つい自分が楽しいこと(買い物への浪費、性的無分別、ばかげた商売への投資など)に熱中してしまう
躁状態のときにはやる気まんまんで、頭がムダに回りすぎている状態です。落ち着かず、やる気に反して空回り状態となります。上機嫌かと思えば突然怒り出して暴力的となることもあります。気が大きくなって多額の買い物をしたり、中には無計画に事業を起こしたりします。元気で妄想などもなく「病気」には見えません。それによって「あいつは人が変わった」「暴力的になった」と周辺に誤解され、人間関係が壊れてしまうこともあります。
経過
激しい躁状態は入院に至ることが多いです。治療がない場合も3ヶ月ほどで治まります。その間に周辺との関係が壊れてしまうことが多いです。軽躁状態(軽い躁状態)やうつ状態は半年以上続いたりします。これらの躁状態とうつ状態を何度も再発するのが「躁うつ病」です。最初は再発まで5年くらいかかりますが、再発するたびに、癖になるかのように再発までの時間が短くなり、年に数回も『躁』や『うつ』が再発するようになってしまいます。よって、再発させないことが最初の治療目標となります。病相の期間の割合は同じではなく60%~95%がうつ病相の期間です。躁病相は短期間ですのでうつ病と誤診されるケースが多くあります。
双極性障害(躁うつ病)の治療方法
本来、人間の脳は気分が上がりすぎたら脳の前方にある前頭前野が反応して気分を下げます。同じように気分が下がりすぎたら前頭前野が気分を上げてコントロールします。この前頭前野がうまく働かず、気分が上がりっぱなし(躁)や下がりっぱなし(うつ)になるのがこの疾患です。難しいのは、この前頭前野を直接治せるような薬はありませんので、上がっている気分を下げる薬や、下がっている気分を上げる薬を調整しながら使用しなければなりません。