非定型精神病
非定型精神病について
名前のとおり定型でない精神病です。なら・・・定型の精神病とは何か?となります。定型の精神病とは統合失調症と双極性障害(躁うつ病)のことです。定型にてんかんを含めることもあります。この疾患名を使用するのは日本の・・しかも関西圏が中心です。国際的には全く通用しない疾患名です。関西圏でのみ主流である疾患名をわざわざ使用することには大きな意味があります。それについては後述します。
非定型精神病の症状
1. 急性発症(2週間以内)で周期的な経過をとる。(双極性障害と共通)
2. 意識障害(変容)がありもうろうとした状態となります。その状態を忘れていることもあります。
3. 急な幻覚妄想状態(統合失調症と共通)があるが長く続かない
4. 予後は良好(躁うつ病と共通)で欠格状態や荒廃状態にはならない
5. 障害のエピソードの持続期間は,3ヶ月未満で,最終的には病前の機能レベルまで回復します。ゆえに診断確定は3ヵ月後となります。
統合失調症と双極性障害(感情障害)の合わせたような疾患名で「統合失調感情障害」というものがあります。よく混同されますが非定型精神病と統合失調感情障害は異なる疾患概念です。
統合失調感情障害は統合失調症と双極性障害の症状が同時に存在する時期が必要です。しかし非定型精神病は統合失調症の症状が双極性障害の経過をたどるイメージです。双極性障害の症状は必要ありません。
そもそも非定型精神病の名付け親である満田は臨床遺伝学的研究から、統合失調症や躁うつ病は遺伝生物学的に見ると全く異なった疾患であると考えています。遺伝生物学的に考えると中間的な統合失調感情障害などというものはなく、まったく別の疾患として非定型精神病という病名を考えています。
もし非定型精神病を国際的に通用する病名で当てはめるとすれば「急性一過性精神病」が近い概念でしょう。
それなら非定型精神病という病名を使わずに急性一過性精神病という病名を使えばいいのかというとそうではありません。
まず急性一過性精神病はとりあえず緊急入院が必要・・・という臨床的・行政的な緊急性を示せますが反対に患者やその家族には高圧的な意味合いが強くなります。私も緊急の強制入院が必要な状態の患者には一時的に使う病名ではありますが数週間後には変更したい病名です。短期で改善した患者に一時的に悪くなった精神病つまり急性一過性精神病という説明では今後の見通しも、また再発性も伝えにくいと考えます。
だから私は敢えて国際的ではないですが非定型精神病という病名を使用します。
非定型精神病と病名がつけば患者と家族に対して,病気の経過と予後がわかりやすく説明できます。数週間で問題なく改善している患者に対して統合失調症とは異なる病気なので薬の減量・中止を行えることも説明できます。周期的に再発を繰り返すことも説明できます。周期が長ければ薬の中止ができます。そして周期が短いなら再発予防のために抗精神病薬を使い続けることが必要です。しかしこの場合の抗精神病薬は完全に症状がなくなった患者に(予防的に)内服してもらうので統合失調症と同じ抗精神病薬を使うというわけにはいきません。
その場合は再発リスクは下がっても副作用が患者を苦しめることになりかねません。症状があるときには良い薬でも全く症状のない時期には毒となってしまう可能性があるからです。
症状が無いときにも内服できる抗精神病薬と考えると現状ではエビリファイがベストの選択かと思います。
非定型精神病の薬物療法
非定型精神病の薬物療法1>>
以下は医療関係者用資料
非定型精神病診断基準
A:精神的に健康な状態から,突然,精神病症状(B 症状)が発現し,顕在化(診断基準に該当すること)まで2週間以内であることB 症状の発現前に前駆症状(不眠,不安)が出現することがある。
B:次の3つの項目のうち少なくとも2つの症状
が同時に起こること
・ 情緒的混乱a)
・ 困惑,および記憶の錯乱b)
・ 緊張病性症状c)または,幻覚または,妄想
C:障害のエピソードの持続期間は,3ヶ月未満で,最終的には病前の機能レベルまでおよそ回復すること
3ヶ月後に診断確定となるが,それまでは「疑い」とする
D:物質または一般身体疾患の直接的な生理学的作用による障害は除外とする
用語説明
a)情緒的混乱:至福感や恍惚感,著明な不安,著明な易刺激性を特徴とするもの
b)困惑,および記憶の錯乱:当惑,困惑,人物や場所の誤認,思路の錯乱
エピソード後に健忘を残すことがある
多形性に現れる
c)緊張病症状:以下の項目のうち少なくとも1つの症状がみられるもの
1)カタレプシーまたは昏迷として示される 無動症
2)過度の運動活動性
3)極度の拒絶症あるいは無言症
4)常同姿勢,常同運動,顕著な衒奇症,顕著なしかめ面などとして示される自発運動の奇妙さ
5)反響言語または反響動作
下位項目の特定
該当すれば以下の項目を特定すること
1. 著明なストレス因子のあるものまたは著明なストレス因子のないもの
2. 遺伝負因のあるもの(第一級親族内) または遺伝負因のないもの
3. 前駆症状のあるものまたは前駆症状のないもの