薬物依存症

私の薬物マニュアル

精神科医は抗精神病薬・抗不安薬・抗うつ薬・気分調整剤・睡眠薬などなど・・・の薬を使って治療をします。精神科薬は多種多様で100種類以上存在します。しかし、現存する精神科薬全てを駆使して治療する・・・という精神科医はいないと思います。例えば、睡眠薬にしても私が処方する睡眠薬は現時点で5種類ほどです。そこから症状に合わせて処方していきます。これは僕に限らず・・・だと思います。それぞれの医師が処方する選択肢はそれほど多くないと思います。例えば、皮膚科のステロイド一つとっても、市場されているステロイドを全て駆使して治療にあたる・・・って皮膚科医はいません。現在その医師が信頼している数種類の薬剤から選択するのが普通です。この薬剤選択に関しては最も医師の個性が出る部分です。ただ・・・私自身は薬剤選択に『好み』という個性が出ると危険だと感じているので、学会の推奨薬や信用ある論文での推奨など信頼性のあるデータが揃っている薬剤しか使用していません。ゆえに発売すぐの薬剤はデータが出揃うまで処方いたしません。「私の使い心地がいいから」といった理由では処方いたしません。
私は精神科医としては標準的な精神科医だと思ってます。よって自分で薬の使い方を編み出したりはいたしません。標準的な精神科医が独自性を打ち出すと患者を危険にさらすことになると思うからです。ゆえに学会で発表されたマニュアルや信頼できる精神科医が発表されているマニュアルに沿った治療をしたいと思います。ここに私の「好み」や独自性は挟み込みません。もちろん新しい試みなしに医療は進歩しません。しかし、新しい試みを私の患者にすることはしたくないです。新しい治療法を編み出し、患者さまに試行するのは大学などの研究機関に任せたいと思います。マニュアルというと無機質な響きがしますが、これらは私よりも知識の深い医師たちが試行錯誤の上に捻出した治療方法です。当然、悪い治療法であるはずがありません。マニュアル通りの治療はゴール設定が明らかで副作用が出現した際の対応もマニュアル化されており迅速な対応ができます。これに従うことが私の治療への誠意と思ってます。私にしかできない卓越した治療はできませんがマニュアルを厳守することで広い効果が期待でき、安全性の高い治療法が行えると思っています。
そういうわけで前もって私の処方する薬剤や処方方法は数種類に決まってます。精神科に受診するのに「どんな治療がされるの不安・・・」という方も多いのではと思います。診察が始まって「あ・・・こんな治療されるんだ・・」と分かるのが普通だと思います。それでは不安が大きいと思いますので、私の処方マニュアルを自由に見れるようにしております。少しでも受診時の不安が解消されればと思います。

薬の効果について

「こころ」の病に薬が効くのか?
こんな質問をよくされます。
バリバリ効きます!・・・と言えたらいいですがそうとは言えません。しかし全く効かないわけでもありません。仮に薬物療法が否定されれば精神科医の存在価値はなくなってしまいます。そこまで医学は無力ではありません。特に脳の病気=「心」の病気に対しては劇的に効くこともまれではありません実際には「メチャクチャ効きました」と言われる患者もおられます。ただし「こころ」の病気に対してはなかなか薬物で完治・・・は難しいところです
*「心」と「こころ」の違いに関しては理事長ごあいさつをご覧ください
「こころ」の病気に関しては薬物療法は対症療法であることが多いです。風邪薬のようなものです。風邪を治す薬は現時点では発明されてませんが、咳を抑える薬 熱を下げる薬 痛みをとる薬 鼻水を抑える薬、鼻の通りを良くする薬 免疫力を高める栄養剤やビタミンなどなどの薬が無駄なものではないことは明らかです。風邪のウイルス自体は倒せないですが、症状を緩和したりしながら自身の回復力で回復されるのを待つ、そんな補助的・援助的な役割が風邪薬です。
精神科薬も似たようなもので、本来人がもつ精神回復力を助ける形で作用します。だから・・「薬だけで治す」って考えは危険です。薬に加えてご本人の環境調整や考え方の修正が少なからず必要となってきます。診察の場ではこの点にも言及します。
「8割は薬で改善しますが2割はあなたの頑張ってもらう部分です」
「薬で改善する部分は4割です。あとの6割は生活を変えてみたりすることで改善しましょう」など・・・
アドバイスいたします。
「医者やろ?薬だけですっきり治せや!」とのお叱りを受けそうですが
『パワハラ上司改善薬』
『離婚問題解決薬』
『金銭問題解決薬』
『人が変わったように社交的になる薬』
『能力以上に仕事がでるきようになる薬』
『リストカット防止剤』
『夫からの暴力があっても平気でいれる薬』
・・・・・などはないのです。このように薬だけでスッキリ治す・・・ができない状態もあります。でも、事実は変わらなくとも物事の捉え方で「こころ」の状態はかなり変えることができます。そこらへんは「認知行動療法」で詳しく説明します。しかし、物事の捉え方ってのはその人の癖みたいなものがあって
変えるのはなかなか容易ではありません。苦痛を伴います・・・その苦痛を和らげられるのもまた薬物です。

薬の副作用

副作用はありません・・・とは言えません。しかし、他科で使用する内服薬と同じかむしろ少ないと言えます。精神科薬が特に強い副作用を持っていると勘違いされている方がいますがそうではありません。反対に医師が処方する薬で副作用が全く無い薬は存在しません。軽い胃薬や風邪薬ですら副作用はゼロではありません。精神科薬でよくある副作用として『眠気』があります。落ち着く・・を目標にしている薬が多いので必然的にそうなります。『眠気』を目的としている睡眠薬の副作用が『眠気』というのも少し違和感がありますが望まない時間に効果が出現すれば副作用と言われます。落ち着くための薬で落ち着き過ぎると眠気が強くなり『過鎮静』と言われます。いずれにせよ適切に薬を調整すれば改善します。その他、数々の薬剤に特有の副作用がありますが重症化するような副作用がでることはまれです。薬剤へのアレルギーなどで重症化したりすることがごくまれにはありますがそれは精神科薬以外の薬と同じ程度の割合です。