睡眠障害(不眠症など)
睡眠障害(不眠症など)について
睡眠障害はいくつかに分けることができます。
1.睡眠障害で最も多いのが不眠症です。色々な理由で眠れない状態です。
2.その反対に過眠症という病気もあります。ずっと眠りすぎたり、突然眠気が襲ってきて発作的に眠ってしまうような状態となります。
3.また睡眠スケジュールの障害もあります。睡眠時間自体は十分取れているが適切な時間に眠れない状態です。夕方に眠りに入って深夜に目が覚める・・とか朝方に眠りに入り昼まで眠ってしまうとかです。
4.睡眠時随伴症といって睡眠中に好ましくない身体現象を生じる状態もあります。「寝ぼけ」「寝言」「歯ぎしり」「足のピクつき」などが含まれます。
ここでは最も多い「不眠症」について説明します。
日本人の20%以上が不眠症だといわれています。
まず「眠れない」だけでは不眠症ではありません。それに加えて「日中の活動に支障が出る」があって不眠症と診断されます。
不眠は以下の4つに分類されます。
入眠障害:なかなか寝付けず。眠るまでに30分以上かかる。
中途覚醒:途中何度も目が覚めてしまい、すぐに眠れない。
熟眠障害:ぐっすり眠った感じがしない。
早朝覚醒:起きたい時間より2時間以上も早く目が覚めてしまう。
アテネ不眠尺度(AIS)
過去1カ月間に、少なくとも週3回以上経験したものを選んでください。最後に、各選択肢についている点数を合計します。
1:寝床についてから実際に眠るまで、時間がかかりましたか?
いつも寝つきはよい …………………………………………………… 0
いつもより少し時間がかかった ……………………………………… 1
いつもよりかなり時間がかかった …………………………………… 2
いつもより非常に時間がかかった、あるいは全く眠れなかった … 3
2:夜間、睡眠の途中で目が覚めましたか?
問題になるほどのことはなかった …………………………………… 0
少し困ることがある …………………………………………………… 1
かなり困っている ……………………………………………………… 2
深刻な状態、あるいは全く眠れなかった …………………………… 3
3:希望する起床時刻より早く目覚めて、それ以降、眠れないことはありましたか?
そのようなことはなかった …………………………………………… 0
少し早かった …………………………………………………………… 1
かなり早かった ………………………………………………………… 2
非常に早かった、あるいは全く眠れなかった ……………………… 3
4:夜の眠りや昼寝も合わせて、睡眠時間は足りていましたか?
十分である ……………………………………………………………… 0
少し足りない …………………………………………………………… 1
かなり足りない ………………………………………………………… 2
全く足りない、あるいは全く眠れなかった ………………………… 3
5:全体的な睡眠の質について、どう感じていますか?
満足している …………………………………………………………… 0
少し不満である ………………………………………………………… 1
かなり不満である ……………………………………………………… 2
非常に不満である、あるいは全く眠れなかった …………………… 3
6:日中の気分は、いかがでしたか?
いつもどおり …………………………………………………………… 0
少し滅入った …………………………………………………………… 1
かなり滅入った ………………………………………………………… 2
非常に滅入った ………………………………………………………… 3
7:日中の身体的および精神的な活動の状態は、いかがでしたか?
いつもどおり …………………………………………………………… 0
少し低下した …………………………………………………………… 1
かなり低下した ………………………………………………………… 2
非常に低下した ………………………………………………………… 3
8:日中の眠気はありましたか?
全くなかった …………………………………………………………… 0
少しあった ……………………………………………………………… 1
かなりあった …………………………………………………………… 2
激しかった ……………………………………………………………… 3
8つの質問項目の各得点(0~3点)を、全て足し合わせて総得点を出してください。
[4点未満]・・・睡眠が取れています。
[4~5点]・・・不眠症の疑いが少しあります。念のため、一度睡眠専門医に診てもらうことをおすすめします。
[6点以上]・・・不眠症の可能性が高いです。是非、睡眠専門医の診察を受けてください。
睡眠障害(不眠症など)の治療方法
薬物療法についてお話しする前に、まずご理解いただきたいのが不眠との訴えに対して処方しないこともありうるということです。
睡眠は誰もが行う生活の一部です。
だからこそ薬以外の方法が選択されることもあります。
例えば・・・
「先生8時間しか眠れないんです」と仰る方に、睡眠薬を処方する可能性は低いです。
「お酒を飲んでも眠れないんです」と仰る方には、お酒を止めていただく必要があります。
(ちなみに不眠の原因となる嗜好品ベスト3はカフェイン(コーヒー・お茶)・アルコール・タバコです)
「19時に布団に入っても眠れるのは23時くらいです」と仰るかたには、23時に布団に入ってもらうようにします。
交替勤務で不規則な仕事をされている方が、睡眠リズムを整えることができないと仰るときには、規則正しい時間に勤務できるように転職されることをすすめることもあります。
・・・ここらへんは千差万別なので個々に説明いたします。
かつて8時間睡眠が必要と言われていた時代がありましたが、現在は必要な睡眠時間は個々で異なると言われています。
同じ人物でも、年齢とともに必要な睡眠時間は減少します。
昼間に眠たくなければ睡眠は十分・・・くらいに大雑把に考えてもらうほうが望ましいと思います。
大学で不眠症の方の夜間脳波をとる実験をしたことがあります。
「眠れない」と仰る方たちに入院いただき脳波測定するつもりでしたが、
結果は・・失敗でした。
理由は・・・ほとんどのかたがきちんとした睡眠脳波(つまり眠れている)となったからです。
脳波的には完全に眠れていた方に、翌朝感想を聞くと「今日も眠れませんでした」と・・・
眠れているかたを更に眠らせるのは難しいです。(睡眠状態誤認といいます)
こういう方は「眠れていない」とは言いながら、日中に眠たくなることはありません。
眠れているのですから当然といえば当然です。
ご本人に現状説明し、「実際には眠れている」から身体的には問題がないことをお伝えして、安心して帰っていただきました。
参考:日本睡眠学会による「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」