うつ病
うつ病について
元気が出ず憂うつな状態となります。しかし「単に元気が出ずに悲しい」のではなく、涙を流すことは少ないと言われています。「悶えるような苦しみ」だと言われ、地獄からのメッセージが届くような状態と例えられたりします。言葉数も少なく、活動性が低下し、苦しそうな表情をされます。診察室で質問しても一言ぐらいしか話されない方もいます。
うつ病の症状:下記症状が全て出るわけではありません
興味の喪失
周囲に興味が持てず他人との関わりが面倒になります。「何も感じることができない」「どうでもよい」と訴えます。好きだった趣味も興味が薄れできなくなります。私見ですがこの「好きだった趣味への興味がなくなった」が、うつ病診断では最も重要と考えています。好きだったことができなくなったら精神科受診を考えられたほうがいいと思います。反対に「嫌いだった仕事への興味がさらになくなった」などはうつ病でなくともありえることです。
思考制止
ものが考えられなくなります。頭の回転が遅くなったように感じるでしょう。中には記憶力の低下と考え「認知症」ではないかと家族が心配して受診されたりします。うつ病性仮性認知症といわれ認知症とは異なりうつ病が改善すれば記憶力も改善します。
焦燥感
イライラ感のことです。気分が落ち込んでいるのにエネルギーだけが残存しているときに起こります。この段階が一番自殺に至ることが多く要注意です。症状の進行とともにエネルギーも低下して、イライラすることすらできなくなります。
自己評価の低下
自己評価が異常に低くなります。自己の能力・財産・生命の評価が低くなります。重症化すれば価値のない存在と決め付け訂正不能となります (微小妄想と言います)。「自分がいつも皆に迷惑を掛けている」「何もかも自分が悪い」「何か悪いことが起こるのではないか」「何か病気にかかっていて死んでしまうのではないか」などと考えます。微小妄想に悲観して「もう終わりだ・・・いっそ死んでしまおう」と自殺に至ることも多いので要注意です。
企死念慮
死にたいという気持ちのことです。患者様の2/3がこの気持ちを抱き、患様者の10〜20%が自殺を企てます。自殺するにもエネルギーが要るので重症時期には起こりません。エネルギーの回復した重症からの回復期に起こりやすいので症状が良くなったからと油断するのは危険です。
意欲・行動の異常
行動が前に進まなくなります。着替えすらもできなくなる場合もあります。日々の慣れた行動ですら面倒くさくなります。就業者であれば当然仕事はできず微小妄想をさらに悪化させます。性欲や食欲は低下します。睡眠障害も頻発します。教科書的には朝早く目が覚める早朝覚醒となることが多いです。
日内変動
一日の内で抑うつ気分は朝に最も悪く、夕方にかけて症状が改善というパターンをとります。仕事はできないのに夕刻の飲み会では普通に話せてしまいますので「サボリ」というレッテルを貼られてしまうこともあります。
うつ病の原因
はっきりした原因は不明です。しかし、仮説ですがストレスに弱いという「個性」にストレス環境が加わって発症するというストレス脆弱性が有力視されています。ストレスへの弱さは遺伝的なものもありますが、双極性障害より遺伝性は低いといわれています。それよりも何度もストレスに曝された結果、神経回路が傷つき後天的にストレス脆弱性を獲得するといわれています。元々の性格もその原因といわれます。性格が遺伝的なものか後天的なものかは意見が分かれるでしょうが、私は後天的な影響が強いのではと考えています。真面目で几帳面、責任感が強く、他人のために尽くすことを旨とし、道徳的に行動する方が多いです。当然、仕事ができる方が多く、うつ病発症が企業に与える損失もかなり大きなものとなります。そのため大きな企業ではうつ病対策が最重要事項となりつつあります。ちなみによくある間違いが「自身のやる気の問題」とか「気合が足りないから」とかをうつ病の原因と考えることです。基本的に「脳」の病気です。「こころ」の持ちようでどうにかなるものではありません。人格全てが入れ替わったように抑うつ的になり「やる気」や「気合」でどうにかなったりはしません。もし気合で回復されたのならうつ病ではなかった可能性が高いと思います。
うつ病の治療方法
それぞれに効果が異なりますが効果が出るのは早い人で1週間、遅い人だと1ヶ月ほどかかります。今日飲んで明日に効くという薬ではないので、自分で判断して減量や中止をするのは止めてください。また急に中止するとリバウンド(退薬症状)が現れますので非常に危険です。主治医と相談の上、減量するようにされてください。
効果が出るのが遅いのでそれまでのツナギとして抗不安薬を使用します。また不眠の方が多いので睡眠薬も使用いたします。これらはともに抗うつ薬の効果が出てくれば中止を目指します。
抗うつ薬が効果なければ「うつ病」ではない可能性を考えます。
また「うつ病」であってもストレスが過剰な環境では改善は期待できません。毎日皮膚をヤスリで傷つけながら傷の治療をしても当然治りません。毎日ストレスで心を傷つけながらでは心の治療効果は半減します。場合によっては仕事を休む、配置替えを上司にお願いする、などの処置も考えます。もっと重度な場合は精神科病院への入院をお勧めすることもあります。
日本人はとにかく頑張りすぎです。しかし御自身のためには「頑張らない」ことも必要だと思います。
軽症うつ病
うつ病 薬物療法1>>