治療内容
社交性不安障害(あがり症)の抗うつ薬

病気説明で記載したとおりセロトニン不足が原因とされていますのでセロトニンを増やすタイプの抗うつ薬を使用します。セロトニンが減少する代表疾患が「うつ病」です。うつ病の治療薬である抗うつ薬はこのセロトニンを増やす薬ですのでそれを利用します。社交不安障害の薬物療法の軸となる薬です。不合理な恐怖や不安を軽減し、回避行動を減少させ、新たな行動パターンの獲得が期待できます。うつ病の治療法でも述べましたがすぐに効果が出る薬ではありません。早い人で1週間、遅い人だと1ヶ月かかります。今日飲んで明日に効くという薬ではないので自分で判断して減量や中止をするのは止めてください。また急に中止するとリバウンド(退薬症状)が現れますので非常に危険です。中止したいのなら主治医と相談の上、減量するようにされてください。
副作用として飲み始めに体内のセロトニンが量が増えたことにより一時的に吐き気などの胃腸症状が出ることがありますが内服を開始して3~10日で改善します。その際は中止はせずに吐き気止めで対応します。その他薬によっては頭痛・眠気・一時的なイライラの増加があることがあります。
この際も自分の判断だけで薬の量を急に減らしたり止めたりせず、主治医への相談をお願いします。
薬剤の使い方はうつ病薬物療法を参照下さい。
うつ病 薬物療法1
うつ病 薬物療法2
うつ病 薬物療法3
うつ病 薬物療法4

2015年02月19日
うつ病 薬物療法4

レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩)10mg×1錠より開始
副作用:口の乾き 吐き気 頭痛←これらは最初の1週間を超えると治まってきます

不安が強いなら抗不安薬(セディールまたはワイパックス)を頓服に

《1週間》→効果有りならこの量で3ヶ月継続→その後減量を考慮

レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩)10mg×1錠のまま経過(増量はしない)
副作用:気分が高まりすぎる→躁うつ病を疑い内服中止→双極性障害の薬物療法に移行

《効果判断期間1ヶ月》→効果不良なら→レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩)10mg×2錠に増量

↓ 効果不良なら薬物療法②か③へ

効果有り

《3ヶ月》  →抗不安薬減量中止

レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩)10mg×1錠に減量
《1ヶ月》

初発なら中止
その際には中止時の副作用:手のしびれ・発汗過多に注意

初発でなければ
レクサプロ(エスシタロプラムシュウ酸塩)10mg×1錠6ヶ月以上継続

2015年02月03日
双極性障害(躁うつ病)の抗うつ薬

本来は使用しません。うつ病学会の治療ガイドラインからも一時期消えてました。しかし現在のガイドラインには『慎重投与』と書かれていますがうつ状態のときのみに使用が許可されています。躁状態の時や維持期には使用すべきではありません。うつ状態は改善したけど躁状態に突入・・・という躁転の副作用があることをきちんと説明し、理解してもらってから内服を開始します。気分調整薬が効かない時の最終手段と思ってます。ただデータ的には下記の抗うつ薬の影響での躁転はないとされています。

 

1.ジェイゾロフト(セルトラリン)
うつ病 薬物療法1を参照されてください。
うつ病の治療では最大量まで飲んでいただくことが原則ですが、うつ病ではないので最大量まで増やさないこともあります。

 

2.サインバルタ(デュロキセチン)
うつ病 薬物療法2を参照されてください。
うつ病の治療では最大量まで飲んでいただくことが原則ですが、うつ病でないので最大量まで増やさないこともあります。

2014年12月18日
双極性障害(躁うつ病)の抗精神病薬

1.エビリファイ(アリピプラゾール)
元は統合失調症の薬です。少量の使用で抗うつ作用があるとの報告もありますが、私見では少量ではなくきちんとした量を飲んでいただき、躁状態を押さえ込む薬として考えています。ですので3mgや6mgという少量ではなく12mg~30mgで処方します。躁が治まるとうつ状態を悪化させてしまうので躁状態に合わせての増減が必要な薬です。躁状態が改善すれば中止とする場合もあります。

 

2.リスパダール(リスペリドン)
統合失調症の薬です。躁状態への使用は適応外使用です。鎮静効果が高いため躁状態の急性期に使用する薬剤です。気分が持ち上がるのに無理に押さえつけるイメージで使用します。エビリファイより速効性がありますが、量を増やしすぎると副作用(手が震えたり、生理不順となったり)が出現します。4mg~10mgで使用します。躁が治まるとうつ状態を悪化させてしまうので躁状態に合わせて中止が必要な薬です。

 

3.ジプレキサ(オランザピン)
元は統合失調症の薬ですが躁にもうつにも適応があります。眠気が強いタイプの抗精神病薬です。10mg~20mgの使用で比較的マイルドに躁状態を抑えてくれます。不思議な薬でうつ状態にも効果があります。うつ状態には5mgで処方することもありますが躁状態と同じく20mgまで必要なこともあります。

2014年12月18日
双極性障害(躁うつ病)の気分(安定)調整薬

躁うつ病の治療の中心となる薬剤です。『躁』と『うつ』を安定化させる薬です。真逆の症状が出現するので、気分を上げるだけの薬や下げるだけの薬は症状を悪化させる原因にもなるので、注意が必要です。その気分安定薬は「安定」と名がついているように、激しく上下する気分の波を穏やかな波にするようなイメージで効果を発揮します。

 

1.リーマス(リチウム)
教科書的には第1選択薬とされている薬剤です。うつ状態にも効果があるとのデータもありますが主に躁状態に効果を発揮します。
しかし、私にとっては第1選択薬ではなく、他の気分調整薬で効果がないときに使用する第3選択薬以下の位置づけです。その理由は、急な躁状態では間に合わないことや、少なすぎると効果がなく、多すぎると中毒になりやすいため、マメに血中濃度を測定する必要があり、患者さまへの負担が大きいと思うからです。

 

2.デパケン(バルプロ酸)
元はてんかんの薬です。躁状態に効果がある薬です。予防薬としても効果がありますし、急な躁状態にも効果を発揮することがあります。
リーマスのようにマメな採血は必要ありませんが、肝臓への影響もある薬剤なので年に数回の採血は必要でしょう。

 

デパケンR(200mg) 1錠から開始して1週間毎に1錠ずつ増量し6錠まで増やすことができます。うつ状態への効果も報告されてますが、どちらかと言えば躁状態に効く薬です。混合状態(躁とうつが入り混じったイライラの強い状態)の患者さまにも有効です。

 

3.ラミクタール(ラモトリギン)
これも元はてんかんの薬です。うつ状態には第1選択薬かと思います。反面、躁状態には全く効果がありません。よって、躁状態への薬を併用する必要があります。しかし、抗うつ薬のように躁状態に悪化させる(躁転と言います)がないので、使いやすい薬かと思います。しかし、皮膚症状の副作用という独特な副作用があるので要注意です。副作用が出ないように徐々に増やす必要があります。
維持期にも使用できる薬なので、うつ状態が治まっても症状にあわせて増減をする必要はありません。

2014年12月18日
認知症(軽い物忘れも含みます) その他の薬剤

1.ジェイゾロフト
抗うつ薬です
高齢者のうつ病が認知症と誤診されている場合があります
その場合に処方できる薬です
最小量の25mgで効果がある場合が多いです
また作用機序ははっきりしませんがFTD(前頭側頭型認知症)の常同行為何度も同じ行為を繰り返すに対して効果があることもあります(少数です)

 

2.サアミオン
脳循環改善薬です
5mg×3錠毎食後で内服します
元気が出ないタイプの認知症に効きます

 

3.シンメトレル
パーキンソン病への薬ですが2.サアミオンと同じく元気を出す薬として使用します
50mg×2錠 朝夕で処方します

 

4.抗パーキンソン病薬
DLB(レビー小体型認知症)の上下肢の動かしにくさ歯車様固縮に対して使用します
メネシット・マドパーから使用しペルマックスで調整します

2014年11月27日
認知症(軽い物忘れも含みます) 鎮静薬

攻撃性の強いFTD(前頭側頭型認知症)に限らずAD(アルツハイマー型認知症)でも攻撃性が高まることはまれではありません。家族や施設の介護者が一番困って入院相談となるのがこのケースだと思います。まずは抗認知症薬は更なる興奮を引き起こしますので使用せず穏やかになっていただくことに専念します。

 

1.グラマリール
効果は鋭くないですが安全性が高く、高齢者には第一選択薬かと思います
グラマリール25mgからスタートして150mgまで使用します
効果がみられて落ち着かれてから抗認知症薬を処方します。AD(アルツハイマー型認知症)やVD(血管性認知症)でよく使います

 

2.セロクエル
抗精神病薬ですが短時間作用のため高齢者にも使いやすい薬です
糖尿病患者には使用できません
眠気の副作用が強いため転倒に注意が必要です。
セルクエル25mgからスタートして200mgまでは使用可能です

 

3.リスパダール液剤
抗精神病薬です
作用時間も2日以上あるので使いすぎに注意です
外来での高齢者には4mgまでかと思います
錠剤や粉剤もありますが副作用の少ない液剤を使用します
DLB(レビー小体型認知症)には副作用が強くて使用できません
FTD(前頭側頭型認知症)の興奮を落ち着かせる際に使います

 

4.コントミン
抗精神病薬です
12.5mgからスタートして75mgまでは使うことができます
鎮静がかかりすぎることがあるため注意が必要です
嚥下障害(むせる・喉を詰まらせる)が出てきたら中止です
FTD(前頭側頭型認知症)の興奮を落ち着かせる際に使います

 

5.抑肝散
今回説明した認知症のなかではDLB(レビー小体型認知症)に効果があります
幻視などにも効果が出ることもあります
その他の認知症に対しては第1選択薬の鎮静薬ではありません
低カリウムの副作用がよく起こるので数ヵ月毎の採血が必要です

2014年11月27日
認知症(軽い物忘れも含みます) 抗認知症薬

脳はたくさんの脳細胞の集まりですが、この脳細胞同士はつながってはいません。では、ばらばらなのかと言えばそうではなく神経伝達物質という物質で情報をやりとりしています。その伝達物質のなかのアセチルコリンという神経伝達物質がAD(アルツハイマー型認知症)で減少しているということが分かっています。そのアセチルコリンを増やす薬が抗認知症薬です。これらの薬は一時的に物忘れを改善させますが認知症そのものを改善させるのではありません。脳細胞は減少していますが伝達物質を薬で増やすことで伝達能力を上げて認知能を改善する薬です。薬によって萎縮した脳が元の大きさに戻ることもありません。また、内服により認知症の進行を遅らせますが、完全に進行を止めることはできません。まれに内服後に劇的に良くなったという方もいますがほとんどの場合「相変わらずの物忘れがあります」という現状維持の状態で効果が出る薬です。
私は患者様やご家族に「脳に栄養を与える薬」と説明しています。薬理学的には正しい表現ではないですが、一般の方には理解しやすいと思います。興奮が強い患者様には「栄養を与える」と興奮がさらに悪化するのでしばらくは使えません。また「栄養を与えて」も認知症が進行しすぎていて栄養を受け取る細胞が残っていないと効果はありません。

 

1.アリセプト
2011年まではこの薬しかありませんでした。
AD(アルツハイマー型認知症)・VD(血管性認知症)に使用します
DLB(レビー小体型認知症)では体の傾きや筋硬直などの副作用が出る可能性が高い薬です
FTD前頭側頭型認知症では興奮が強くなりますますので介護がしにくくなる可能性があります

アリセプト3mgで開始

下痢・食欲不振・興奮の副作用があれば→中止・他の抗認知症薬に変更
歩行障害の副作用が出ればDLB(レビー小体型認知症)の可能性大→中止・他の抗認知症薬に変更

副作用がなければ
アリセプト5mg
・・・以後飲み続けていただきます

 

2.レミニール
2011年から日本で使用されています
全ての認知症に使用可能です

レミニール4mg×2 朝夕

下痢・食欲不振・興奮の副作用があれば→レミニール4mg×1に変更

副作用がなければ
レミニール8mg×2 朝夕

アリセプトと同じくアセチルコリンという神経伝達物質を増やしますが
その他アリセプトにはない作用機序を持つため興奮の副作用はでにくいです
また歩行障害などの副作用もでにくくDLB(レビー小体型認知症)では第一選択薬かと思います
興奮が出ればFTD前頭側頭型認知症では中止します

効果が短く一日2回の朝夕にしなければならないため飲み忘れが多い患者には使用ができません
しかし効果が短いため興奮による不眠などの副作用の出現が少ないというメリットもあります

レミニール12mg×2 朝夕まで増やせます
私見ですが8mg×2が効かない人は増やしても効かないことが多いですが、効いていたのに悪化とともに効かなくなってきたという患者は12mg×2に増量すると効果が出ることもあります

 

3.メマリー
アリセプトやレミニールとは全く異なる作用機序の薬です
脳神経細胞が死滅するのを抑えます
作用機序が異なるのでアリセプトやレミニールとも併用できます

メマリー5mg
↓(1週間)
メマリー10mg
↓(1週間)
メマリー15mg
↓(1週間)
メマリー20mg

1週間毎に5mgずつ増量します
しかし眠気が一日中強かったり、その逆に興奮したり、めまいのため転倒したり強い便秘が出たり・・・そんな副作用が出たらその前のmg数に戻します
結構な方が20mgまで増やす前に副作用が出てしまって10mgや15mgでの処方となっています
重度の認知症にも使用効果がありますので最終の砦のような薬だと考えています

2014年11月27日
うつ病 薬物療法3

リフレックス(レメロン)15mg×1錠より開始
副作用:眠気口の乾きだるさ便秘←これらは最初の1週間を超えると治まってきます

不安が強いなら抗不安薬(セディールまたはワイパックス)を頓服に

《1週間》→効果有りならこの量で3ヶ月継続→その後減量を考慮

リフレックス(レメロン)15mg×2錠
副作用:気分が高まりすぎる→躁うつ病を疑い内服中止→双極性障害の薬物療法に移行

《効果判断期間1ヶ月》→効果不良なら→リフレックス(レメロン)15mg×3錠

効果不良なら薬物療法2か薬物療法4へ

効果有り

《3ヶ月》→抗不安薬減量中止

リフレックス(レメロン)15mg×1錠に減量

《1ヶ月》

初発なら中止
その際には中止時の副作用:手のしびれ・発汗過多に注意

初発でなければ
リフレックス(レメロン)15mg×1錠6ヶ月以上継続

2014年11月08日
うつ病 薬物療法2

サインバルタ20mg×1錠より開始
副作用:吐き気・下痢・便秘・不眠・眠気←これらは最初の1週間を超えると治まってきます
朝に内服が原則だが眠気があれば眠前に内服も許可
不安が強いなら抗不安薬(セディールまたはワイパックス)を頓服に

《1週間》→効果有りならこの量で3ヶ月継続→その後減量を考慮

サインバルタ20㎎×2錠
副作用:気分が高まりすぎる→躁うつ病を疑い内服中止→双極性障害の薬物療法に移行

《効果判断期間1ヶ月》→効果不良なら→サインバルタ20㎎×3錠→効果不良なら薬物療法3か薬物療法4へ

効果有り

《3ヶ月》→抗不安薬減量中止

サインバルタ20mg×1錠に減量

《1ヶ月》

初発なら中止
その際には中止時の副作用:手のしびれ・発汗過多に注意

初発でなければ
サインバルタ20mg×1錠6ヶ月以上継続

2014年11月08日