認知症(軽い物忘れも含みます) 抗認知症薬

脳はたくさんの脳細胞の集まりですが、この脳細胞同士はつながってはいません。では、ばらばらなのかと言えばそうではなく神経伝達物質という物質で情報をやりとりしています。その伝達物質のなかのアセチルコリンという神経伝達物質がAD(アルツハイマー型認知症)で減少しているということが分かっています。そのアセチルコリンを増やす薬が抗認知症薬です。これらの薬は一時的に物忘れを改善させますが認知症そのものを改善させるのではありません。脳細胞は減少していますが伝達物質を薬で増やすことで伝達能力を上げて認知能を改善する薬です。薬によって萎縮した脳が元の大きさに戻ることもありません。また、内服により認知症の進行を遅らせますが、完全に進行を止めることはできません。まれに内服後に劇的に良くなったという方もいますがほとんどの場合「相変わらずの物忘れがあります」という現状維持の状態で効果が出る薬です。
私は患者様やご家族に「脳に栄養を与える薬」と説明しています。薬理学的には正しい表現ではないですが、一般の方には理解しやすいと思います。興奮が強い患者様には「栄養を与える」と興奮がさらに悪化するのでしばらくは使えません。また「栄養を与えて」も認知症が進行しすぎていて栄養を受け取る細胞が残っていないと効果はありません。

 

1.アリセプト
2011年まではこの薬しかありませんでした。
AD(アルツハイマー型認知症)・VD(血管性認知症)に使用します
DLB(レビー小体型認知症)では体の傾きや筋硬直などの副作用が出る可能性が高い薬です
FTD前頭側頭型認知症では興奮が強くなりますますので介護がしにくくなる可能性があります

アリセプト3mgで開始

下痢・食欲不振・興奮の副作用があれば→中止・他の抗認知症薬に変更
歩行障害の副作用が出ればDLB(レビー小体型認知症)の可能性大→中止・他の抗認知症薬に変更

副作用がなければ
アリセプト5mg
・・・以後飲み続けていただきます

 

2.レミニール
2011年から日本で使用されています
全ての認知症に使用可能です

レミニール4mg×2 朝夕

下痢・食欲不振・興奮の副作用があれば→レミニール4mg×1に変更

副作用がなければ
レミニール8mg×2 朝夕

アリセプトと同じくアセチルコリンという神経伝達物質を増やしますが
その他アリセプトにはない作用機序を持つため興奮の副作用はでにくいです
また歩行障害などの副作用もでにくくDLB(レビー小体型認知症)では第一選択薬かと思います
興奮が出ればFTD前頭側頭型認知症では中止します

効果が短く一日2回の朝夕にしなければならないため飲み忘れが多い患者には使用ができません
しかし効果が短いため興奮による不眠などの副作用の出現が少ないというメリットもあります

レミニール12mg×2 朝夕まで増やせます
私見ですが8mg×2が効かない人は増やしても効かないことが多いですが、効いていたのに悪化とともに効かなくなってきたという患者は12mg×2に増量すると効果が出ることもあります

 

3.メマリー
アリセプトやレミニールとは全く異なる作用機序の薬です
脳神経細胞が死滅するのを抑えます
作用機序が異なるのでアリセプトやレミニールとも併用できます

メマリー5mg
↓(1週間)
メマリー10mg
↓(1週間)
メマリー15mg
↓(1週間)
メマリー20mg

1週間毎に5mgずつ増量します
しかし眠気が一日中強かったり、その逆に興奮したり、めまいのため転倒したり強い便秘が出たり・・・そんな副作用が出たらその前のmg数に戻します
結構な方が20mgまで増やす前に副作用が出てしまって10mgや15mgでの処方となっています
重度の認知症にも使用効果がありますので最終の砦のような薬だと考えています

2014年11月27日