治療内容
全般性不安障害の抗不安薬
ほとんどがベンゾジアゼピン系と言われる抗不安薬です。この薬は、脳内神経伝達物質の一種であるギャバの働きを調整することによって、不安症状や興奮を改善する薬です。抗うつ薬より即効性があります。定期的に服用することもありますが、必要な時だけ頓服として使うという方法が一般的です。定期的に常用すると依存が形成されやすいので注意が必要です。また睡眠薬のほとんどがベンゾジアゼピン系であることから分かるとおり眠気の副作用が大なり小なりあります。種類も多数ありますが頓服として使用することが多いので、私がよく処方するのが超短時間作用型のアルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、ロラゼパム(ワイパックス)です。
そしてベンゾジアゼピン系でないタンドスピロン(セディール)という抗不安薬もあります。この薬はセロトニン1A部分作動薬という種類でベンゾジアゼピン系と異なった作用機序で不安を和らげます。セロトニンが増えるわけではないですがセロトニンが増えたのと同じ作用があります。作用としてはセロトニン量を増やす抗うつ薬よりは弱いのですが軽症の方はこの薬を朝昼夕と定期的に飲むことで改善されることもあるくらいです。定期的に内服しても依存形成はないですし眠気などの副作用もほとんど生じません。実はセディールは抗不安薬の私が最も処方する薬です。短所としては効き目が短いので一日中効かせようとすると何度も飲んでいただけないといけないこと、眠気が無いのでいつ効いてきたか分からないことです。これらの短所のため患者からの人気はベンゾジアゼピン系より劣りますが私的には抗うつ薬以外で不安障害を根本的に改善できる可能性のある唯一の抗不安薬と考えています。 
2016年02月22日
全般性不安障害の抗うつ薬

セロトニン不足が原因とされていますのでセロトニンを増やすタイプの抗うつ薬を使用します。セロトニンが減少する代表疾患が「うつ病」です。うつ病の治療薬である抗うつ薬はこのセロトニンを増やす薬ですのでそれを利用します。社交不安障害の薬物療法の軸となる薬です。不合理な恐怖や不安を軽減し、回避行動を減少させ、新たな行動パターンの獲得が期待できます。うつ病の治療法でも述べましたがすぐに効果が出る薬ではありません。早い人で1週間、遅い人だと1ヶ月かかります。今日飲んで明日に効くという薬ではないので自分で判断して減量や中止をするのは止めてください。また急に中止するとリバウンド(退薬症状)が現れますので非常に危険です。中止したいのなら主治医と相談の上、減量するようにされてください。
副作用として飲み始めに体内のセロトニンが量が増えたことにより一時的に吐き気などの胃腸症状が出ることがありますが内服を開始して3~10日で改善します。その際は中止はせずに吐き気止めで対応します。その他薬によっては頭痛・眠気・一時的なイライラの増加があることがあります。
この際も自分の判断だけで薬の量を急に減らしたり止めたりせず、主治医への相談をお願いします。
薬剤の使い方はうつ病薬物療法を参照下さい。
うつ病 薬物療法1
うつ病 薬物療法2
うつ病 薬物療法3
うつ病 薬物療法4

2016年02月22日
妄想性障害 薬物療法1

妄想性障害に対しては抗精神病薬を使うにしても副作用を考慮しながらの処方となる。

統合失調症の治療に準じた治療が行われることが多いが副作用を考慮すると統合失調症の薬物療法3が望ましい。
また妄想を深追いせずに「妄想があっても」落ち着けたり・不安を抑えたりすることを目的として気分調整薬や抗不安薬の処方をすることもある。

2015年06月23日
非定型精神病の薬物療法1

病気説明の通り悪化時の症状は統合失調症様です。症状自体は統合失調症の薬物療法(抗精神病薬)で改善します。しかしそれで治療は終結しません。
非定型精神病は3ヶ月以内にほぼ完全に治ります。そこで抗精神病薬を使い続けると患者には大きな負担になります。抗精神病薬は統合失調症の治療と同じく新世代型抗精神病薬を使用します。副作用が少ないことが特徴である新世代型抗精神病薬ですが、それは症状のある方に対してのことであって症状のない方には副作用、特に過鎮静の副作用が出る可能性が高まります。
統合失調症の方には再発予防・脳保護作用のために飲み続けていただく抗精神病薬ですが「治ってしまう」非定型精神病に対しては飲み続けることは負担でしかありません。
症状の回復と共に抗精神病薬を中止する必要があります。

 

患者も再発慣れしてくると「悪化の予兆」が分かってきます。

その兆しが出てくると抗精神病薬を再開するパターンがとれれば統合失調症の治療薬全てが使用可能です。

改善すれば薬物を完全に中止します。そしていざという悪化に備えて1週間くらいの処方を常備してもらいます。

 

しかし急に現れるのがこの疾患の特徴です。教科書的には予兆があるとされていますが「あっというまに悪くなる」と言われる方もいます。
その場合は薬物を完全に中止できません。悪化に備えて正常時にも抗精神病薬を内服する必要があります。

 

そして、その場合の選択肢は一剤しかないと考えています。その一剤はエビリファイです。

エビリファイだけが正常時にも副作用を気にせずに内服できる治療薬だと考えています。

 

発症の予測が出来ない場合の薬物療法:エビリファイ

 

日本で開発された薬です
少量であれば副作用が少ない薬です
陰性症状改善が得意ですが陽性症状も抑えてくれます。

 

エビリファイ6mg(重症の場合は12mgより開始)

1週間以上経過

陽性症状改善→改善していない→エビリファイ30mgまで増量→改善していない→他剤に変更

改善している

完全に回復した時点で減量開始
患者の不安もあるためできるだけゆっくりと減量

エビリファイ12mgまで減量
過鎮静などの副作用があれば6mgまで減量し継続内服いただく

悪化があっても少量内服しているだけでゆっくりと治療にあたれますし
大きく悪化することもありません。

 

1.良い薬ですが神経への結合能が他剤に比べて強いのでエビリファイがあるとジプレキサやリスパダールが全く効きません。最初に使って効かなかったときに他剤への切り替えが難しい薬です。そのため第一選択薬とはしないことが多いです。

 

2.6mg以下で使用すると覚醒作用が強く出て悪化に見られることもあります。反面、引きこもりぎみな患者には6mg以下が効果的であることもあります。

 

2015年05月26日
統合失調症 薬物療法3

日本で開発された薬です
前出の2剤よりも副作用が少ない薬です
脳保護作用の報告はジプレキサの次に多い薬です
陰性症状改善が得意ですが陽性症状も抑えてくれます

エビリファイ6mg(重症の場合は12mgより開始)

1週間以上経過

陽性症状改善している

その量で維持 基本的に長期内服が必要

改善していない

エビリファイ30mgまで増量

陽性症状改善している

その量で維持 基本的に長期内服が必要

改善していない→他剤に変更

1.良い薬ですが神経への結合能が他剤に比べて強いのでエビリファイがあるとジプレキサやリスパダールが全く効きません。最初に使って効かなかったときに他剤への切り替えが難しい薬です。そのため第一選択薬とはしないことが多いです。

2.6mg以下で使用すると覚醒作用が強く出て悪化に見られることもあります。反面、引きこもりぎみな患者には6mg以下が効果的であることもあります。

2015年05月11日
統合失調症 薬物療法2

新世代型抗精神病薬として最初に発売された薬です
風邪薬で例えると解熱薬のような存在です
広く効く薬ではなくてピンポイントで症状を抑えれる薬です
特に陽性症状を抑えるのが得意です

リスパダール4mg(重症の場合は6mgより開始)

1週間以上経過

眠気が強いなどの過鎮静→過鎮静がある→他剤に変更

過鎮静がない

陽性症状改善している

リスパダール4mgで維持
基本的に長期内服が必要

改善していない

リスパダール6mg

陽性症状改善している

リスパダール6mgで維持
基本的に長期内服が必要

改善していない→他剤に変更

1.12mgまで使える薬ですが6mgを超えると従来型抗精神病薬と同じく副作用がでやすくなります

2.脳保護作用を期待するなら6mgより4mgが優れているとのデータがあるので常に減量を目指します

3.錠剤や粉剤だけでなく液剤もあります。液剤は従来型抗精神病薬の注射剤と同じくらい効果発現が早く、頓服として利用価値があります。

4.高プロラクチン血症が出やすい薬です。本来妊娠したときに増えるのがプロラクチンです。副作用でプロラクチンが増えると体は「妊娠状態」と勘違いして乳房の膨張・乳汁分泌・無月経がおこります。この副作用は男性にもあって乳房の痛みや乳汁分泌で気づかれます。

2015年05月11日
統合失調症 薬物療法1

糖尿病患者には使ってはいけません。糖尿病を悪化させます。
私はそこを除けば現時点で一番バランスの取れた薬剤と思っています
風邪薬でいう総合感冒薬的な薬剤
広く色々な症状を緩和します
陽性症状だけでなく陰性症状にも効果があり
データ的には脳保護作用が最も確認されている薬剤です。

ジプレキサ10mgから開始(重症の場合は20mgより開始)

1週間以上経過

ジプレキサ20mg→強い眠気→ジプレキサ10mgに減量・維持 基本的に長期内服が必要

体重増加(3ヶ月で10kg以上)→体重増加あり→他剤に変更

体重増加なし

ジプレキサ20mgで維持 基本的に長期内服が必要

1.ジプレキサ10mgで陽性症状が改善しても陰性症状の改善・脳保護作用を期待して20mgまでの増量が望ましい

2.体重増加の副作用は用量に関係なく起こり
減量しても体重は増え続けると言われています
体重増加があれば中止→薬剤変更しか方法がありません
中止すれば体重増加は治まります

3.体重増加を放置すると糖尿病へ移行してしまいます
また高脂血症も合併します

4.他剤に変更しても効果が無い場合は脳保護作用でそれ以上の進行を遅らせる目的で
ジプレキサ内服に戻ります

2015年05月11日
注意欠陥多動性障害(ADHD) 薬物療法1

ストラテラ

ノルアドレナリンを増やす薬です。私は諸々の理由から抗ADHD薬として使用する薬はこれだけです。これは従来の抗ADHA薬に比べると依存性がない薬剤です。速効性がないことと効果がぼんやりしているのが特徴です。徐々に注意力不足が改善していくという感じです。劇的に効かないので途中で止められる患者が多いです。しかし元々ADHDは病気というより本人の性質の一部です、全てが改善するというよりは円滑な社会生活が送りにくかった性質が和らぐようなイメージで内服されるといいと思います。劇的に効かないからといって止めてしまうのはもったいないと思います。治療効果の判定は自分では分かりにくいものです。自分で治療効果が判定できるような評価法がありますのでご相談ください。

また嘔気・食欲低下・めまい・だるさなどの副作用が内服初期に現れますが徐々に改善していくので副作用が出たので中止という即断ももったいないと思います。

《18歳以上の成人への処方》

ストラテラ40mg

1週間以上後

ストラテラ80mg→悪心・頭痛・動悸などの副作用が続く→ストラテラ40mgも考慮

2週間以上後

ストラテラ120mg→悪心・頭痛・動悸などの副作用が続く→ストラテラ80mgも考慮

4週間後に効果判定

効果がある場合でも更に数ヵ月後にはストラテラ80mgへの減量を考慮

効果がない場合減量中止

《18歳未満への処方》

ストラテラ0.5mg×体重(kg)

1週間以上後

ストラテラ1.2mg×体重(kg)→悪心・頭痛・動悸などの副作用が続く→ストラテラ0.5mg×体重(kg)も考慮

1週間以上後

ストラテラ1.8mg×体重(kg) ただし120mgを超えないように

→悪心・頭痛・動悸などの副作用が続く→ストラテラ1.2mg×体重(kg)も考慮

4週間後に効果判定

効果がある場合でも更に数ヵ月後にはストラテラ1.2mg×体重(kg)への減量を考慮

効果がない場合減量中止

2015年04月13日
社交性不安障害(あがり症)のβブロッカー(β遮断薬)

不安や緊張が高まると、動悸、息切れ、発汗、震えなどの身体症状がでてきます。これらを抑制する時に使われる薬がβブロッカー(ミケラン・テノーミンなど)です。定期薬ではなく必要時に頓服飲みしていただきます。動悸や息切れなどの身体症状は、脳内神経伝達物質の一種であるアドレナリンが全身の交感神経を刺激することによって起きます。βブロッカーは、このアドレナリンの効果を遮断する働きがあり、交感神経の刺激が抑制されて、症状が緩和します。社交不安障害の人が、強い不安や緊張を感じやすい場面、たとえば大勢の前で、大事な発表をしなければならないような時、発表の直前に服用することによって症状を抑えようというものです。動悸を一時的に抑えることで動悸→不安・緊張→動悸悪化というサイクルを断ち切ります。
気管を収縮させる作用もあるので気管支喘息のある患者には使用禁止です。

2015年02月19日
社交性不安障害(あがり症)の抗不安薬

ほとんどがベンゾジアゼピン系と言われる抗不安薬です。この薬は、脳内神経伝達物質の一種であるギャバの働きを調整することによって、不安症状や興奮を改善する薬です。抗うつ薬より即効性があります。定期的に服用することもありますが、必要な時だけ頓服として使うという方法が一般的です。定期的に常用すると依存が形成されやすいので注意が必要です。また睡眠薬のほとんどがベンゾジアゼピン系であることから分かるとおり眠気の副作用が大なり小なりあります。種類も多数ありますが頓服として使用することが多いので、私がよく処方するのが超短時間作用型のアルプラゾラム(ソラナックス、コンスタン)、ロラゼパム(ワイパックス)です。
そしてベンゾジアゼピン系でないタンドスピロン(セディール)という抗不安薬もあります。この薬はセロトニン1A部分作動薬という種類でベンゾジアゼピン系と異なった作用機序で不安を和らげます。セロトニンが増えるわけではないですがセロトニンが増えたのと同じ作用があります。作用としてはセロトニン量を増やす抗うつ薬よりは弱いのですが軽症の方はこの薬を朝昼夕と定期的に飲むことで改善されることもあるくらいです。定期的に内服しても依存形成はないですし眠気などの副作用もほとんど生じません。実はセディールは抗不安薬の私が最も処方する薬です。短所としては効き目が短いので一日中効かせようとすると何度も飲んでいただけないといけないこと、眠気が無いのでいつ効いてきたか分からないことです。これらの短所のため患者からの人気はベンゾジアゼピン系より劣りますが私的には抗うつ薬以外で不安障害を根本的に改善できる可能性のある唯一の抗不安薬と考えています。

2015年02月19日