非定型精神病の薬物療法1

病気説明の通り悪化時の症状は統合失調症様です。症状自体は統合失調症の薬物療法(抗精神病薬)で改善します。しかしそれで治療は終結しません。
非定型精神病は3ヶ月以内にほぼ完全に治ります。そこで抗精神病薬を使い続けると患者には大きな負担になります。抗精神病薬は統合失調症の治療と同じく新世代型抗精神病薬を使用します。副作用が少ないことが特徴である新世代型抗精神病薬ですが、それは症状のある方に対してのことであって症状のない方には副作用、特に過鎮静の副作用が出る可能性が高まります。
統合失調症の方には再発予防・脳保護作用のために飲み続けていただく抗精神病薬ですが「治ってしまう」非定型精神病に対しては飲み続けることは負担でしかありません。
症状の回復と共に抗精神病薬を中止する必要があります。

 

患者も再発慣れしてくると「悪化の予兆」が分かってきます。

その兆しが出てくると抗精神病薬を再開するパターンがとれれば統合失調症の治療薬全てが使用可能です。

改善すれば薬物を完全に中止します。そしていざという悪化に備えて1週間くらいの処方を常備してもらいます。

 

しかし急に現れるのがこの疾患の特徴です。教科書的には予兆があるとされていますが「あっというまに悪くなる」と言われる方もいます。
その場合は薬物を完全に中止できません。悪化に備えて正常時にも抗精神病薬を内服する必要があります。

 

そして、その場合の選択肢は一剤しかないと考えています。その一剤はエビリファイです。

エビリファイだけが正常時にも副作用を気にせずに内服できる治療薬だと考えています。

 

発症の予測が出来ない場合の薬物療法:エビリファイ

 

日本で開発された薬です
少量であれば副作用が少ない薬です
陰性症状改善が得意ですが陽性症状も抑えてくれます。

 

エビリファイ6mg(重症の場合は12mgより開始)

1週間以上経過

陽性症状改善→改善していない→エビリファイ30mgまで増量→改善していない→他剤に変更

改善している

完全に回復した時点で減量開始
患者の不安もあるためできるだけゆっくりと減量

エビリファイ12mgまで減量
過鎮静などの副作用があれば6mgまで減量し継続内服いただく

悪化があっても少量内服しているだけでゆっくりと治療にあたれますし
大きく悪化することもありません。

 

1.良い薬ですが神経への結合能が他剤に比べて強いのでエビリファイがあるとジプレキサやリスパダールが全く効きません。最初に使って効かなかったときに他剤への切り替えが難しい薬です。そのため第一選択薬とはしないことが多いです。

 

2.6mg以下で使用すると覚醒作用が強く出て悪化に見られることもあります。反面、引きこもりぎみな患者には6mg以下が効果的であることもあります。

 

2015年05月26日